失業したけど、なにか?【第2話】

2017年8月16日

スポンサーリンク



上京

じわじわと熱気がこもる地下鉄の盲導鈴の音が、僕らをこれから始まる都会の生活に誘っていた

 

しかし、都会はアホみたいに暑いな
彼女
ほんと、暑いね~

 

 

19才の僕は故郷を捨て、彼女と一緒に地下鉄弘明寺駅のホームに降り立った

滴り落ちる汗を拭いながら、僕らはこれから始まる新生活を想像していた

 

 

給料がよくて住み込みで働けるところ

求人雑誌を買ってきては、仕事の内容もろくに見ないで、片っ端から電話をかけて履歴書を送った

 

 

仲間とつるんで悪さばかりしていた僕は、なんとなく時間ばかりが過ぎて、このまま小さくまとまってしまうことが怖くて、彼女を連れて逃げるように田舎を飛び出した

 

 

住み込みで働けるところが決まり、金も頼れるような人も何もなかったが、2人で始める新しい生活に不安はなく、若い僕らは希望に満ちあふれていた

 

 

オレはこの街で成功してみせるぜ!
彼女
幸せになろうね♡

 

僕と彼女

18才のとき彼女に出会い、いつからか僕は彼女の実家に転がり込むようにして居候していた

 

居候といっても、玄関から堂々と家のなかに入るのではなく、バイトが終わって深夜に、彼女の部屋の窓からこっそりと忍び込むのがいつものパターンだった

 

 

彼女の母親は昼間働いていたので、居候してから僕は運良く顔を合わせたことがない

 

 

いや、一度だけ彼女の母親が部屋に入ってきたことがある

 

 

昼間、彼女とコトが済んでお互い裸で寝ていたら、突然彼女の母親が入ってきたのだ

 

 

僕は仰向けで寝ていて、彼女はうつ伏せで寝ている

 

 

何もかけていない、丸見え状態のなか、母親は鬼の形相で、僕らを怒鳴り散らした

 

 

彼女の母親
あんたら何やってんの!昼間から仕事もしないで×¥●&%#?!

 

 

とにかくこの修羅場が早く終わってほしいと、僕は祈るようにひたすら目を瞑って耐えていたが、ムスコは緊張のせいか直立不動のまま、鬼の罵声を勇者のように一人で立ち向かっていた

 

 

 

どこか僕らは似ていて、彼女も今の現実から連れ出してくれる人を待っていたのかもしれない

 

 

 

そして、2人とも両親が離婚していて、何か普通の家庭に憧れがあったような気がする

 

 

 

いつも僕らは何をするときも一緒で、お互いがお互いを必要としていた

 

 

 

横浜での仕事が決まり、19才の僕らは誰にも相談せずに婚姻届を提出した

失業したけど、なにか?【第3話】はコチラ


 

スポンサーリンク