失業したけど、なにか? 【第4話】

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兄貴

蝉が最後の力を振り絞り鳴いている頃、僕らは新しい街での生活に少しずつ慣れ始めていた

仕事が忙しく、かまってあげられないことへの苛立ちか、知らない街で1人部屋で待っていることの寂しさなのか、彼女はいつもイライラしている

そして若い2人はつまらないことで、いつも喧嘩ばかりしていた

となりの兄貴
やめろ!おまえら

そんなときは、いつも隣に住んでいる「兄貴」が、モノが激しく飛び交うなか、まるでヒーローのように颯爽と僕らの前に現れる

「兄貴」は天然パーマで髪がチリチリしていて、とてもヒーローに似つかわしくない浅黒い肌とガリガリの体型で、必死になって僕らを引き離す

隣に住んでいることもあり、僕らと最初に仲良くしてくれたこの人を僕らは「兄貴」と呼んで慕っていた

「兄貴」は、いつも僕らを笑わせたり、話しを聞いてくれたり、ご飯に連れていってくれる

この「兄貴」のおかげで、僕と彼女の関係は何とか成り立っていたので、僕らにとってこの3つ上の「兄貴」は、まぎれもなくヒーローだった

まだ知り合って1年の10代の男女が、紙の上では夫婦になったとはいえ、すぐには家族になれないのである

そして相手の気持ちを受け止めてあげられるほどの器量を、まだクソガキの僕は持ち合わせていなかった

新しい家族

あるとき休みの日に、2人で商店街を歩いていると、電柱に「子猫飼い主募集、去勢、ワクチン接種済み」の張り紙を見つけた

これだ!

連れの不安な心が少しでも和らぐのではないかと僕は考えたのである

早速、書いてあった連絡先に電話をして、次の休みの日に、飼い主のお宅に僕ら2人はお邪魔することになった

玄関を入ると飼い主の方に抱っこされた、まだ小さな小さな赤ちゃん猫が眠たそうな目でこっちを見ている

子猫
ミャーミャー

連れはこの赤ちゃん猫を、菩薩のような顔で覗いていた

そして僕らは子猫を連れて帰り、この不完全な家族に仲間が1人増えた

この日から不完全家族のクルーとなった子猫は、この先長い旅を一緒にすることになる

失業したけど、なにか?【第5話】はコチラ


失業したけど、なにか? 【第4話】
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