失業したけど、なにか?【第6話】

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親父と母親
親父と母親は、見合い結婚だったらしく、僕が幼い頃2人の結婚式の写真を見た記憶がある

貧乏だったが夫婦仲は良く、離婚して子ども達が自立してから、2人は寂しかったのか、お互いの家を頻繁に行き来していたらしい

いつだったか、親父と母親は車で突然、遊びに来たことがあった

僕はたまたま休みで、ゴミを捨てようと外に出ると、目の前で助手席に乗った母親が手を振っている

何やってんの、来るなら連絡ぐらいしろよ

母親
びっくりしたでしょ~

上京してから、仕事が忙しくぜんぜん帰ってなかったので、親父と母親に会うのは久しぶりだった

2人は1週間ほど、僕の家に泊まっていき、孫達にも会えて楽しかったと思う

東日本大震災のときは、1週間連絡が取れず僕も諦めかけていたが、結局2人で避難所に寄り添っていた

親父が自殺するとき、母親の携帯に連絡があったらしいが、母親は冗談だと思い、その場は取り合わなかったそうだ

しかし、胸騒ぎがした母親はその後警察に連絡する

川に親父が浮いているところを、近くを通りかかった人が発見してくれた

その川は、僕ら家族が昔住んでいた団地の裏手にあった川だった

親父は死に場所として、なぜその場所を選んだのか?
たぶん、人生で良かった頃の思い出が、その場所を選んだ理由だと僕は思う

すぐ僕にも警察から連絡が入った

親父が亡くなったと警察から聞いたとき、僕は特別驚きはしなかった

なんとなく「ああ、そうか自殺したのか」と思っただけだった

その日の夕方には、新幹線に乗り故郷の宮城に僕は向かった

親父が自殺した事実よりも、これからしなければいけない「後処理」のことばかり考えていて、新幹線での移動中ずっと僕は、携帯で調べものばかりしていた

遺体の引き取り、火葬、通夜、葬式、納骨、親父の部屋の片付け……

夜には警察に到着し、刑事さんから死因は水死で事件性がないこと、発見時の状況などを一通り聞いた後、同じ敷地内にある遺体安置所に僕は向かった

遺体安置所のドアを開けると、二段ベッドの下から親父は冷凍マグロのように出てきて、地獄の入り口に立っているかのような臭気が辺りを漂い、その臭いのせいで僕の頭はクラクラして、ここに来るまでの忙しさと疲れから、その場に踏ん張っているのがやっとだった

パンパンに膨れあがった親父の顔を見ながら、僕は最後に親父と電話で話したことを思い出していた

親父が自殺した理由

その日いつものように親父はパチンコで負けて、金の無心をするために酔っ払いながら、僕に電話をしてきた

そんな親父に対して、冷静に僕は言う

「何が楽しくて生きてんの? 正直迷惑だから、自殺でもして、もう人生終わらせた方が世の中の為じゃない?」

親父は何も言わず電話を切った

そしてこの電話が親父と話した最後で、その数週間後後自ら命を絶った

「僕が親父を殺したのだ」

酒の飲み過ぎで体を壊し、まともに働くことも出来ない

少ない生活保護費のなかで、唯一の楽しみと言えば酒とパチンコぐらい

しかも一銭も残らず負けては子供にたかり、子供からは「自殺すれば?」と言われる始末

経営していた飲食店が潰れてから、自分で人生を終わらせるまでのこの何十年間、親父は何を考えながら生きてきたのだろう?

悔しくなかったのか?

それとも自分なりに折り合いをつけて、時間が止まったように虚しい日々を過ごしていたのか?

自分ではどうすることも出来ない現実から逃げるために、酒を飲んで妄想の世界に入り込み自我を保っていたのか?

そんな親父に似ている僕は、家族から見放され、退屈で味気のない人生に絶望し、同じ道を辿るような不安が心の奥底から、ずっと消え去らずにいる

失業したけど、なにか?【第7話】はコチラ


失業したけど、なにか?【第6話】
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